ガイアノーツ P-01 ガイアマルチプライマー 使用レポート (ABS樹脂&ポリエチレン編:RGフリーダムのその後)

2012.05.25 | author: | 開発計画 | ETCETERA
2度目の「ガイアノーツ P-01 ガイアマルチプライマー 使用レポート」です。前回のポリプロピレン編に続き、ABS樹脂とポリエチレンに対してもマルチプライマーを使ってみたので、その模様をレポートしたいと思います。ミッチャクロンマルチでは、シリコンとポリエチレン(低密度ポリエチレンを除く)に対しては密着しないという公式発表があるので、このマルチプライマーではどうなのかが非常に気になりますね。ABS樹脂の場合は、本来はプライマーを使用せずともプラモ用塗料なら普通に定着するのですが、別の用途も兼ねてテストしています。では、じっくり検証していきましょう。

ガイアマルチプライマー

まずは、ABS樹脂のランナーに対しての効果テストですが、前回と同じ比較対象郡(未処置、メタルプライマー使用、マルチプライマー使用)を設けています。繰り返しとなりますが、メタルプライマーは本来金属用のプライマー(下塗り剤)となります。代用品として使った場合での想定なので、メタルプライマーの樹脂へ使用を推奨、保証するものではありませんので、予めご了承ください。
試験対象に対して行っていることは、各ABS樹脂ランナーについた油分を取り除いたことのみで、特に下地作りはしていません。そこに、各プライマーをエアブラシで適量吹いて乾燥後、Mr.カラーのつや消しブラックにて塗装しました。

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー

塗料が乾燥したところで、ぐいっと90度ほど折り曲げてみた状態(ABSの柔軟性で外観は半分くらいまで戻ります)です。いずれのケースでも、表裏ともに塗膜の剥がれや亀裂などはなく、塗料がしっかりと素材と密着していることを裏付けています。マルチプライマーだけポッキリ折れていますが、これは折り曲げた場所が悪かった(余分なランナーを切断した箇所だった)ためで、マルチプライマーがABSを侵食して…ということではありません(^^; 切断面周辺をみても、不自然に塗膜が剥がれるといったことはありませんでしたので、特に異常はないと思われます。

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー

続いて、爪楊枝で擦った状態です。どのパターンも、軽く擦る程度なら剥げることもないのですが、少し力を入れると同じように塗膜が剥がれてしまいました。マルチプライマーにおいても、”ポリプロピレンのときのような密着感”は残念ながらなく、標準的な効果しかない模様です。しかし、他と比べて塗料の乗りにマイナス面があるわけでもないので、アドバンスドMSジョイント(ABS+PP)のような”複数材ランナー ”に対して使用しても、問題はないということですね。

ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー

冒頭でも書いたとおり、ABS樹脂への塗装は、通常のプラモ用塗料だけでも普通に出来ることは分かっていたことです。問題は、テンションが掛かった状態にプライマーを使うことで、溶剤の侵食を防げるかどうかにあります。ということで……ABS樹脂へのテストその2「予め折り曲げて白化させたABS樹脂に塗装をしてみる」、いきますよー。
しかし、実際に組んだ状態のパーツを犠牲にするのは忍びないので、ランナーを折り曲げて白化させた”擬似ハイテンションA・B・S! ”に、エナメル塗料を塗って試してみました。これまでと同様に、油分だけ取り除いた未処置、ABSの割れ防止の定番であるメタルプライマーを処置したモノ、マルチプライマーを塗ったモノ、の3パターンに、エナメルのつや消し黒をたっぷり筆塗りしてのテストです。筆塗り後は、溶剤の浸透を考慮して4日ほど放置しておきました。

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー

乾燥させた”擬似ハイテンションA・B・S! ”の折れ曲がった箇所を、さらにグググイっと曲げてみます。未処置は、簡単にポキっと折れてしまい、エナメル溶剤が白化した箇所に浸透して、ABS樹脂を脆くさせたことを伺わせます。メタルプライマーを塗った方は、180度近くまで曲げていくと……じりじりとねじ切れるような感じで亀裂が入っていきました。写真の状態でもまだ辛うじて繋がっています。折れるのではなく、ねじ切れるのは、ABSのもつ粘りが失われていない証拠でしょう。
肝心のマルチプライマーを塗ったモノは、メタルプライマーと同じ結果に。つまり……マルチプライマーによるコーティングで、エナメル溶剤が樹脂に浸透するのを防げたということになります。ただし、これは”ある1つの条件下におけるテスト ”なだけですから、これでマルチプライマーを使えば絶対大丈夫というわけではありません。なのでプライマーを過信せず、その時点で出来る対策は施すことで、”割れる確率が低い状況 ”を自らつくっていきましょう。

ガイアマルチプライマー

今度は、PEことポリエチレンへの塗装テストです。テスト方法は、これまでと同じく油分を除去したポリエチレンランナーに対し、そのまま塗装したモノ、メタルプライマーをエアブラシで塗った上から塗装したモノ、マルチプライマーをエアブラシで塗った上から塗装したモノ、の3パターンで比較検証しています。塗料は、冒頭のABSテストでも使用した、Mr.カラーのつや消しブラックです。こちらを、それぞれに比較対象にエアブラシで3度塗りしています。くどいようですが……メタルプライマーは本来金属用の下塗り剤ですので、お忘れなくー。

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

塗料乾燥後、いつものように90度ほどクイっと折り曲げてみました。未処置は、曲げた外側の塗膜に細かな亀裂が入り、内側は塗膜が完全に割れて剥がれている箇所があります。まぁ予想出来た範囲ですねー(^^; メタルプライマーを塗った方はというと、こちらも外側には亀裂が見られ……あれ?未処置よりも大きな亀裂が入っているような……。内側の塗膜の剥がれ方も、未処置と同等かそれ以上に顕著な感じがします。これは、単にメタルプライマーの方に油分が残っていたかもですし、ラッカー系の塗料よりもメタルプライマーの方がポリエチレンへの食いつきが悪いという可能性もあります。いずれにしても、メタルプライマーはポリエチレン用の下塗り剤ではないので、如何なる結果となっても致し方ないわけですが。
マルチプライマーを塗った方は、なんと外側、内側ともに塗膜の異常は認められませんでした。凄いな……、マルチプライマーならポリプロピレンだけでなくポリエチレンでもいけるかー。ガンプラにおいても、稀にポリエチレンはパーツの材質として使われるので(MGグフv2のヒートロッドなど)、活躍の場は多そうです。あとAFV(戦車など装甲戦闘車両のこと)を作られる方なら、少し古いキットでの定番だった”ポリキャタピラ ”の下地剤にもってこいですね。

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー

爪楊枝を使った塗膜の耐久度も見てみましょう。これに関しては、メタルプライマーが一番塗膜が脆く、ついで未処置、マルチプライマーの順に剥がれやすかったです。ただ、ポリプロピレンのときのような塗膜強度の差には至らず、マルチプライマーを塗った方でも比較的剥がれやすかったのは残念でした。まぁ今回はつや消し塗料だったので、擦ることに対する弱さは、ある程度致し方ない部分もあるかもしれません。

RG 1/144 ZGMF-X10A フリーダム

マルチプライマーを使用後は、必ずツール洗浄剤で洗いましょう。メタルプライマーの使用後は、通常のうすめ液で洗うことが可能ですが、マルチプライマーの場合はうすめ液では落ちないため、ツールウォッシュ(ガイアノーツ)、Mr.ツールクリーナー改(GSIクレオス)などの強力な洗浄剤が必須です。特にハンドピースは、そのままだとノズルが詰まったり、ニードルの周りで固まって正常にエアブラシを使うことが出来なくなったりします。しっかり洗ってあげてくださいね。

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

ガイアマルチプライマー ガイアマルチプライマー

最後は、前回塗装した”RG 1/144 フリーダム ”のアドバンスドMSジョイントのその後です。マルチプライマーを下吹きしたのち、ガイアメタルカラーで塗装したモノで、塗料が完全乾燥後に各部を動かし、塗膜の剥がれや、パーツの浸透割れがないかをチェックしました。
ABS、PPともに割れなどの破損はゼロ。塗膜の剥がれについては、二の腕のパーツ取り付け時の剥がれ、太腿と膝の可動による剥がれ、以外は大丈夫でした。逆に言えば、下処理としてここらの対処をしておけば、塗膜の剥がれもなく塗装が可能ということですね。ただし、キットによってアドバンスドMSジョイントのフレーム形状は微妙に異なりますから、その都度可動させて剥がれそうな箇所をチェックする必要はありますよ。

以上です。ミッチャクロンマルチとの違いは分かりませんが、少なくともPPやPEへの有用性は確かでしたので、1瓶5〜600円の価値はあると思いました。使用にあたって、特に下地作りを必要としないというのも、作業の手間を軽減出来ていいですね。まぁ洗浄の手間などはありますが、それは強力故の代償として諦めましょう(^^; それを考えると……ハンドピースは2つ以上あると作業が楽だなー。カップ一体型の0.3〜0.4あたりがもう1つ欲しいところです; って言い出したらキリがないかw
では、See you next time!     

            

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