作ったキットを撮影してみよう 〜 カメラの基礎知識と撮影方法 〜

2011.07.25 | author: | 緋影流プラモデル製作研究所 | 開発計画
ここでは、カメラの基礎的な知識を覚えつつ、実際にカメラに触れていこうと(ようやくかっ)思います。正直ただ写真を撮るだけなら、被写体にカメラを向けてシャッターを押すだけです。今のデジタルカメラでは、レンズを通して入ってくる情報を元に、搭載されている撮影モードの中から可能な限り適切なモードを自動選択して、出来るだけ綺麗に写るようになっています。撮った写真もその場で確認が出来、フィルムとは違い何度でも撮り直しが出来るので、失敗を恐れる必要がありません。つまり問題が起きなければ、予備的なカメラの知識なんて必要ないのです。
ですが、カメラ任せで撮っていて、妙に暗かったり、実際の色と撮れた写真の色が食い違っていたり、ピントが変なところにあっていたりしたことはないでしょうか? そして、それだけお手軽に撮影出来るのに、オート以外の撮影モードが付いているのは何故でしょうか? それは、機械は万能ではなく、人ほどの対応能力を持っているわけではないからです。さらに言えば、”感性 ”は人それぞれですから、いいと思う写真は人により違うこともままあることです。なので、「カメラが上手く機能してくれない」、「思ったように撮れない」…そんなときには、プログラムモードで1つ1つ設定してやればほとんどのケースで綺麗に撮影出来ますし、カメラの基礎的な知識があれば、プログラムモードをより使いこなすことが出来るようになります。
以上のことから、少々回り道をすることになりますが、基礎的な知識を覚えつつ順を追ってカメラを使いこなしていきましょう。

最初に覚えることは、デジタルカメラの大まかな構造…ですかね。細かいところまですべて覚える必要はありませんが(てかそこまで説明できませんw)、仕様書を見てなんとなくでも分かるようにはなりましょう。基本的な原理は、一眼レフもコンデジも携帯電話も何ら変わりませんので、1つ1つ確認しながら説明していきます。

デジカメの基本構造

先ずはごくごく簡単な構造から。デジタルカメラは、レンズに写ったものが液晶ディスプレイに表示されていますよね。これは、レンズを通して入ってきた光を、”撮像素子(イメージセンサーなど呼び方はいろいろ)”という昔のカメラで言うところのフィルムに相当するチップに当てて、光を電気信号に変換させているからです。ですが、その電気信号のままでは映像データとして視覚的に見ることは出来ないので、”画像エンジン(映像エンジン)”と呼ばれる半導体チップを使って電気信号をデジタルデータにさらに変換させ、ようやくレンズを通して見たものが映像として再現されるわけです。写真は、簡略図でそれを表したものとなります。ただあくまでも簡略図なので、実際の内部構造を細かく忠実に再現したものではないですよ(^^;

ですから、わたし達が見ている液晶の映像は、大まかに言うと”レンズ ”、”撮像素子 ”、”画像エンジン ”を経由したモノということになります。つまり、この3つが写真の画質にもっとも影響を与える三大要素となるのです。そういえば…ちょうど撮像素子の話題が出たところですし、前章のコンデジのところで書いた「撮像素子のサイズからくる画質の限界」について、撮像素子の大きさの違いでどんな影響があるかを、例え話を交えながら少し説明していきましょう。


あなたはある部屋の中にいます。そして窓から見える景色を、専属の絵師がキャンバスに描き写すことを監督する仕事をしています。ところが、この部屋の絵師が持ってるキャンバスは、メモ用紙程度の大きさしかありません。その小さな紙に、窓の外の景色を精密に描こうとしても、どうしても再現しきれない部分が出てきてしまいます。
そして、あなたは別の部屋でも同様の監督業務をしています。ここの絵師が手にしているキャンバスは、なんとB2用紙(728mm×515mm)くらいの大きさがあります。これなら、細かい部分もより描きやすいですし、より精密な絵を描くこことが出来るはずですね。


既にお分かりの方も多いと思いますが、この部屋はカメラの例えです。1つ目の部屋がコンデジ、2つ目の部屋がデジタル一眼を、部屋にある窓はレンズを意味し、キャンバスは撮像素子のこととなります。キャンバス=撮像素子が小さいと、それだけ画質が下がるのがお分かりいただけたでしょうか? 大半のコンデジの撮像素子は、一般的なデジタル一眼のソレと比較すると6%ほどしかないので、両者の間には画質の大きな隔たりが出来てしまうのです。ですが、この例え話にはまだ続きがあります。


あなたには、もう1つ大事なお仕事があります。実は…この部屋で描かれた絵は、そのままでは商品になりません。物凄く大きく大きく拡大コピーする必要があるのです。大きさにすると10m四方くらいでしょうか。その拡大作業をするのがもう1つの仕事なのです。最初の部屋では、メモ帳程度の大きさに描かれた絵(しかも細かい部分は再現が追いついていない)を10m四方まで伸ばしていたので、見た目がきちんと滑らかになるように、ありとあらゆる手段を講じました。しかし2つ目の部屋では、元絵の大きさと描かれている絵の内容がより精密なので、拡大コピーをしてもそれほど劣化しなかったそうです。

この例え話の本質は、後半のこちらにあるかもしれません。一番重要なポイントは、”元々小さい絵だったものを10m四方まで大きくしなければいけない ”こと…つまり、”拡大コピーをする行為は、現在のデジタルカメラの高解像度化 ”にあたることです。カメラメーカーは、画素数をひたすらあげてきましたので、今のコンデジは1000〜1400万画素は当たり前の状態。しかも、デジタル一眼よりも遥かに小さい撮像素子を使いながら、デジタル一眼(1200〜1800)と同等クラスの画素数にまで引き延ばしているわけですから、どんなにあなた(=画像エンジン)の仕事が上達したとしても、物理的にどうしてもノイズは出やすくなるわけです。
ただし現実には、ほとんどのデジカメで保存する画像サイズを選択出来るようになってますので、はじめから中間くらいのサイズで撮影するか、最大サイズで撮影して自分の好みのサイズにトリミングするかは、あなた次第となります。もし、これからある程度性能の良いカメラを買うのであれば、見た目の数字に惑わされず、撮りたいモノにあったカメラを選んでくださいね。

さて、デジカメの基本的な構造が分かったところで、次は写真を撮ろうとするときに、カメラの中でどういう動作が行われているか…なんですけど、絞りやシャッタースピード、露出、焦点距離等々、説明すべきことはたくさんあるので…一度に覚えることが多くありすぎると混乱しあますよね; ということで、これらの話は次章にまわすとしましょう〜。

PowerShot A1100IS

前置きも長くなってきたことですし、ここからは写真をまじえながら、実際に撮影をしてみます。使用するデジカメは、オーソドックスでどこにでもあるスペックの”Canon PowerShot A1100IS ”となります。
2009年モデルでもう製造されていませんが、十分現役として使えます。まぁ現在市販されているエントリーモデルと比べると、光学倍率などの差はありますが、画質に極端な差はないでしょう。”マクロモード ”も備えていますし、光学ファインダーもあるので「液晶だけの撮影はちょっと…」という人にもオススメですね。あと駆動が、単3×2本というのもお手軽です。エネループ4本セットがあれば、延々撮影出来てしまいます。
操作に関しては、モード切替はカメラ上部のダイヤルで、シャッターボタンの外周に位置した回転式レバーでズームの調整を、あとの細かい操作は背面スイッチにて行います。

PowerShot A1100IS PowerShot A1100IS

上記のカメラを使って、実際の撮影の手順をこれから紹介していきます。次章ではより細かいことについてもふれていきますが、今回は初歩的な部分からですし、肩の力を抜いて読んでいただければと思います。ですが、皆さんのお手元にあるカメラと、こちらで紹介しているカメラは、恐らく別物でしょう。なので、必ずあなたの使っているカメラの取説をよく読み、こちらで紹介するやり方に該当する操作を行ってください。同じキャノン製であれば、メニューやボタン配列などは似ている可能性も高いですけど、その場合でも機種が違うのであれば取説は必ずよく読んでくださいね。取説の熟読は、カメラに限らずどんな道具でも必須事項ですよっ。もし取説を紛失された場合でも、ネット上にPDFファイルとしてメーカーが配布しているはずですので、探してみてください。

用意するもの

撮影するために最低限用意するモノです。ご覧の通りの”被写体 ””デジカメ ”ですね。この2つさえあれば、一応なんとかなったりします。被写体は、今回は机の脇に転がってた?シェリルフィギュアを。全長9cm弱なので、HGキットよりもさらに小さいサイズになります。もう1つ、あると非常に便利なのが照明。屋内は特に暗くなりやすいので、アームがグネグネ動く電気スタンドがあれば完璧です。

では、実際に撮影してみましょう。カメラの構え方(脇を閉めて両手でしっかりと持つ)とかもありますが、屋内の静物撮影の場合は露出不足(暗い)なケースが多いので、三脚や台を使って撮影することをオススメします。最近のカメラであれば手振れ補正もありますが、万能ではないので過信しすぎないように(自分も昔失敗してましたw)しましょう。カメラ側については、細かい設定は抜きに撮りますので、AUTOモードで撮影します。メーカーによって呼び方とかが違うかもしれませんが、ようは設定は基本的にする必要がなく、カメラにおまかせな撮影モードです。ですが、メーカーや機種によっては、どこまで自動でやってくれるかの範疇が違う場合もあるので、次の2つを必ず確認してください。

マクロ撮影

1つは”マクロモード ”になっているか。被写体とカメラの距離が近い、つまり撮影距離が短いことを”接写(マクロ撮影)”と呼びます。設定の仕方はカメラごとに違いますから、各々で取説をご参照くださいませ。
コンデジは、撮影距離に合わせてマクロ、通常、遠景などのモードを使い分けることで、ピントが合う幅を内部で調整(デジタル一眼はレンズ交換の必要あり)しています。プラモデルやフィギュアといった対象が小さい静物撮影の場合、ほとんどのケースでカメラと被写体の距離が狭まりますので、マクロモードを多用することになります。
どれくらい被写体に近づいて撮影可能かは、カメラによって異なります。今回使用しているPowerShot A1100ISの場合だと、もっとも広角側の状態(一番ズームアウトした状態)で3cmまで、もっとも望遠側にした状態(いっぱいにズームインした状態)で30cmまで寄った撮影が可能です。カメラによっては、スーパーマクロなどと呼ばれる1cm以下での接写が可能なものあります。

フラッシュ禁止

もう1つは、”フラッシュ発光禁止 ”になっているか。部屋の中は、屋外と比べるとかなり暗い環境です。人間の目には十分な明るさであったとしても、カメラにとっては暗いというケースは多々あります。
カメラが暗いと判断すると、フラッシュを使おうとしますが、被写体との距離が近くなりやすい中でフラッシュを使うと、被写体へ当たる光が強くなりすぎ、撮ってみたら背景真っ黒で被写体真っ白(俗に言う白とびです)なんて状態になりかねません。
加えて、上から光があたった状態と、真正面からフラッシュがあたった状態とでは、影のつき方が異なります。普段人の目に写る状態は、上から光があたった状態ですので、正面から強い光があたり、影が消えてノッペリしてしまった被写体を見ると、違和感を覚えてしまいます。
そのため接写においては、基本的にフラッシュの自動発光を禁止する必要があるのです。

前準備が終わったら、いざ撮影です。AUTOモードでの撮影であれば、ただシャッターボタンを押すだけで、最適なモード設定を自動で選んで撮影してくれます。撮影者が気にすべきは、光がきちんとあたっているか、ピントは合っているか、構図は不自然じゃないか、くらいですかね。
撮影するためにはシャッターボタンを押すわけですが、カメラのシャッターボタンは2段スイッチになっていて、半押しと全押しの2種類の押し方があります。両者の使い分けは、半押し状態でピントや露出を合わせ、そこからさらに全押しすることで写真として記録されます。つまりは、半押しは最終確認、全押しで決定ってことですね。
撮影する際は、いきなり全押しするとピンボケしやすくなりますので、必ず半押ししてピントが合っているかを確認する癖をつけてください。

ピント正常

一番大事な部分であるピントがあっているかどうかは、カメラによってシグナルが異なります。
このカメラの場合は、写真の赤い○で括ったとおり、AF(オートフォーカス)フレームがピントが合った場所で緑になり、ファインダー横で緑のLEDが点灯し、音を出す設定にしている場合は”ピピッ ”と鳴ります。あとはこのままシャッターボタンを押し込めば、撮影完了となります。
ちなみにシャッターを半押しした状態は、ピントと露出が固定された状態となるので、ボタンを半押しのままカメラを上下左右に動かすことで、ある程度の構図変更などが出来ます。ただし、前後方向には間違っても動かしてはいけません。なぜならピントが合うということは、被写体とカメラの距離が既に決まった状態なので、前後に動かしてしまうとピント位置も一緒にズレてしまうからです。

ピントがあっていない

一方、もしピントが合わなかった場合は、緑のLEDが点灯、黄色のLEDが点滅、AFフレームが黄色になります。カメラによってこのあたりのシグナルは違いますから、お使いのカメラでピントが合わなかったときにどうなるかは、取説などで確認してくださいね。
この場合の対処方法は、被写体との距離が近すぎるため、もう少し離れてから再度ピントを合わせてみてください。また、手振れがおきやすい状態(明かりが十分じゃないなど)の場合は、写真のようにオレンジのLEDが点灯、すぐ下の黄色のLEDが点滅し、画面左下に三脚使用を促すアイコンが表示されます。このあたりもカメラによって違いますから、取説をよく読んでくださいませ。




ピント正常 ピンボケ

無事撮影が終わったら、撮影した写真をプレビューを使って、その場で確認しましょう。プレビューでは、全体が見える状態で表示されるので、必ずいっぱいに拡大してみて、ピントがあってるかをチェックしてください。きちんとピントがあっていれば、写真左のように拡大してもボケはありませんが、ピントがずれていると拡大すれば写真右のようにボケが目立つようになります。

写真が撮れたら、あとはPCの方へデータを移動するだけとなります。データの移動方法は、基本的に2種類のやり方があります。カメラとPCをUSBケーブルで繋いで、専用のソフトでデータ移動させる方法が1つ。もう1つは、PC側にカードリーダーがある場合は、カメラから記憶カード(SD系カードないしCF系カード)を取り出し、リーダーで読ませる方法となります。どちらを選択するか、また詳しいやり方については、カメラの取扱説明書をご覧ください。

ピント正常

撮影したものを取り込んだものとなります。今回は、うっかりリサイズしてしまったのですが、実際はもっと大きいサイズでの取り込みになると思われます。写真を取り込んでみると、思ってたイメージとは違うなんてことはよくあります。ピントが微妙だったり、明るさが暗すぎたり、色がおかしかったり等々…。今回は初歩的なものということで、ピントが甘かったケースについてご紹介します。
写真左は、ピントが被写体に合っている状態。写真左下はピントが奥の壁紙に合っている状態。AF(オートフォーカス)が誤検出して奥の壁紙にピントを合わせたか、距離が近すぎて被写体にピントを合わせることが出来なかった場合となります。そして写真下は、手振れによりピントがボケた場合。手振れのときは、カメラ自体が揺れてしまうため、どの部分にもピントがあってない状態となります。

ピント対象が違う ピンボケ

ピントが合っているかどうかは、実は判断が難しかったりします。一見するとピントが合っているように見える写真も、あとあとカメラに慣れてきた頃に見返すと、実はまだボケていたり…なんてことも珍しくありません。
人の記憶は曖昧なので、「これくらいのボケでもピントが合っているだろう」と思い込んでしまうのです。それを防ぐには、1度3脚や台を使い、尚且つタイマーで撮影して(シャッターを押す指の力でもブレが発生します)、一切の手振れが無い状態で撮影した”ブレのない基準となる写真 ”を用意することです。カメラに慣れないうちは、ピントがきっちりあった基準となる写真と比較することで、そういった誤差をなくすことが簡単に出来るようになります。

以上、カメラの基本的な知識と、撮影方法についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? カメラの基礎的な知識としては、もっともっと説明しなきゃいけないことが多いのですけど、文章だけでは難解だと思われるので、次章にて実際の対応を交えながら、より詳しく紹介していきたいと思います。
    
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